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派遣の勤怠管理とは?誰が何を管理する?派遣元・派遣先の役割分担と実務を解説

派遣の勤怠管理とは、派遣スタッフの労働時間や休暇の実績を、雇用主である派遣元と、指揮命令を行う派遣先が分担して把握・記録・確定させる一連の業務です。

月末はタイムシートの回収に追われ、打刻漏れや承認の遅れの確認にも時間を取られがちです。派遣の勤怠管理は、雇用主と指揮命令者が別の会社に分かれているため、どちらが何を管理するのかが曖昧になりやすい業務です。

本記事では、採用管理システム「RPM」を提供する株式会社ゼクウが、派遣の勤怠管理における派遣元と派遣先の役割分担を、法令上の根拠とあわせて解説します。

月次の実務フローや締め日から逆算したスケジュールの組み立て方、勤怠管理システムを選ぶときの確認点までまとめていますので、自社の運用を見直す際にお役立てください。

この記事を読むとわかること
  • 派遣の勤怠管理における派遣元と派遣先の役割分担と、その法的根拠
  • 打刻から給与計算・請求までの月次実務フローと、期日の組み立て方
  • よくある課題と、派遣会社が勤怠管理システムを選ぶときの確認点

目次[非表示]

  1. 派遣社員の勤怠管理は誰が行う?派遣元と派遣先で分担する
  2. 派遣元が管理する項目
    1. 賃金と割増賃金の支払い
    2. 年次有給休暇の付与と取得日数の管理
    3. 36協定の締結・届出と時間外労働の上限管理
    4. 労災保険の適用と健康診断の実施
  3. 派遣先が管理する項目
    1. 日々の労働時間・休憩・休日の把握
    2. 安全衛生管理とハラスメント防止
    3. 派遣先管理台帳への記録と派遣元への通知
  4. 派遣社員の勤怠管理の実務フロー4ステップ
    1. STEP1:派遣スタッフが出退勤を打刻する
    2. STEP2:派遣先の指揮命令者が勤務実績を確認して承認する
    3. STEP3:派遣先が期日を定めて派遣元へ就業実績を通知する
    4. STEP4:派遣元が給与計算と派遣料金の請求に反映する
  5. 派遣の勤怠管理でよくある課題
    1. 派遣元と派遣先の二重管理で確認や承認に手間がかかる
    2. タイムシートの回収遅れや転記ミスが起こりやすい
    3. 残業や有給の取得状況をリアルタイムで把握しにくい
    4. 勤怠記録の保管期間を満たせていない
  6. 派遣社員の勤怠管理方法は3つ
  7. 派遣会社が勤怠管理システムを選ぶときのポイント
    1. 派遣先の承認フローに対応できるか確認する
    2. 現場に合った打刻方法を選べるか確認する
    3. シフトや各種申請、36協定超過のアラートに対応しているか確認する
    4. 給与計算や請求業務と連携しやすいか確認する
    5. 派遣特化型と汎用型のどちらが自社に合うか検討する
  8. 派遣の勤怠管理でよくある質問
    1. 派遣社員の残業は派遣元と派遣先どちらの36協定に従う?
    2. 派遣先は派遣スタッフの有給休暇取得を断れる?
    3. 複数の派遣先で働く場合、労働時間はどう管理する?
    4. 打刻漏れがあった場合はどう修正する?
  9. 【まとめ】派遣の勤怠管理は役割分担の理解と運用設計が重要

派遣社員の勤怠管理は誰が行う?派遣元と派遣先で分担する

派遣元と派遣社員が雇用契約を結び、派遣先が指揮命令を行う関係と、派遣元・派遣先それぞれが担う勤怠管理の項目を示した図

派遣の勤怠管理は、派遣元と派遣先が項目ごとに分担して行います。

派遣スタッフは、雇用契約を派遣元と結び、日々の業務指示は派遣先から受けます。雇用関係と指揮命令関係が別の会社に分かれているため、勤怠管理も雇用主としての管理と現場での把握に分かれます

労働基準法や労働安全衛生法の規定は、原則として雇用主である派遣元に適用されます。ただし労働者派遣法には特例があり、労働時間や休憩、休日など現場の指揮命令と切り離せない項目については、派遣先を使用者とみなして適用します。

どちらか一方だけで勤怠を完結させることはできません。主な項目の分担は次のとおりです。

項目

派遣元の役割

派遣先の役割

主な立場

雇用主

指揮命令者

労働時間・休憩・休日

通知された就業実績の確認と集計

日々の始業・終業時刻と休憩時間の把握、記録、通知

時間外・休日労働

36協定の締結と届出

36協定の範囲内での残業の指示

賃金・割増賃金

計算と支払い

年次有給休暇

付与と取得日数の管理

安全衛生

派遣元事業場における衛生管理者・産業医等の選任と、雇入れ時の安全衛生教育

派遣労働者を含む就業先の安全衛生管理体制の整備と、作業内容に応じた安全衛生教育

ハラスメント防止

雇用管理上の措置

雇用管理上および指揮命令上の措置

労災保険・災害補償

労災保険の適用と災害補償

健康診断

一般健康診断

有害な業務に係る健康診断

管理台帳

派遣元管理台帳の作成

派遣先管理台帳の作成と派遣元への通知

※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領

この分担を踏まえて、それぞれが担う項目を順に見ていきます。

派遣元が管理する項目

派遣元は派遣スタッフの雇用主として、労働基準法上の使用者責任を負います。賃金の支払いから休暇の管理、時間外労働の枠組みづくりまで、雇用契約にひもづく項目が対象です。

ここでは、勤怠管理と直接つながる4つの項目を整理します。

賃金と割増賃金の支払い

派遣スタッフへの賃金の計算と支払いは、雇用主である派遣元が行います。派遣先から通知された就業実績が、その計算根拠になります。

割増賃金の支払いも派遣元の責任です。労働基準法では、時間外労働は2割5分以上、法定休日の労働は3割5分以上、深夜労働(午後10時から午前5時まで)は2割5分以上の割増率が定められています。

さらに、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、5割以上の割増率で計算します

派遣先から通知された労働時間に誤りがあれば、そのまま未払い賃金につながります。通知された内容をそのまま転記せず、契約上の所定労働時間や残業の指示内容と突き合わせる工程を残します。

※出典:e-Gov法令検索「労働基準法」、e-Gov法令検索「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令

年次有給休暇の付与と取得日数の管理

年次有給休暇の付与と管理も派遣元が担います。労働基準法では、雇入れの日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の有給休暇を与えると定められています。

以後は継続勤務年数に応じて日数が加算され、6年6か月経過後は年20日になります。

年10労働日以上の有給休暇が付与される人については、そのうち5日を基準日から1年以内に、時季を定めて取得させる義務があります

派遣先が変わっても、派遣元との雇用契約が続いていれば継続勤務年数は引き継がれます。就業先ごとに管理を分けると付与漏れが起きやすいため、スタッフ単位で残日数と取得日数を管理します。

※出典:e-Gov法令検索「労働基準法

36協定の締結・届出と時間外労働の上限管理

時間外労働や休日労働をさせるには、労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

派遣スタッフに適用されるのは、派遣先ではなく派遣元が締結した36協定です。労働者派遣法は、労働時間や休憩、休日の規定を派遣先に適用する一方で、36協定の締結と届出については派遣元の事業場で行うものと読み替えています。

つまり、残業を指示するのは派遣先ですが、どこまで残業させられるかという上限は派遣元の36協定で決まります。

さらに派遣元は、契約に定めた就業条件どおりに働かせると労働基準法に抵触することになる場合、その労働者派遣自体を行ってはならないとされています。派遣契約の内容が自社の協定の範囲に収まっているかは、締結の前に照らし合わせます。

※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

労災保険の適用と健康診断の実施

労災保険や雇用保険などの労働保険と、社会保険への加入手続は派遣元が行います。業務上の負傷や疾病に対する災害補償の責任も、雇用主である派遣元が負います。

派遣スタッフが被災した場合の労働者死傷病報告は、派遣先と派遣元の双方に提出義務があります。派遣元は災害の発生状況を直接確認できないため、状況を速やかに共有してもらう手順をあらかじめ派遣契約に定めておきます。

健康診断は実施主体が分かれます。雇入れ時と定期の一般健康診断は、雇用期間を通じて継続的に行う項目として派遣元が実施します。一方、有害な業務に従事する場合の健康診断は、作業環境を管理する派遣先が実施します。

このほか派遣元は、衛生管理者や産業医の選任と、雇入れ時の安全衛生教育を担います。加えて、派遣就業の状況を派遣元管理台帳に記録する義務も負います。

記載事項や実務対応については、次の記事で解説しています。

※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領

派遣先が管理する項目

派遣先は、指揮命令を行う立場として現場での把握と記録を担います。日々の労働時間の記録から安全衛生、ハラスメントの防止まで、就業している現場でしか確認できない項目が中心です。ここでは派遣先が担う3つの項目を整理します。

日々の労働時間・休憩・休日の把握

労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定は、労働者派遣法の特例によって派遣先に適用されます。派遣スタッフの始業・終業時刻と休憩時間を日々把握し、記録するのは派遣先の役割です

厚生労働省のガイドラインでは、始業・終業時刻を確認する方法として、使用者が自ら現認するか、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎とすることを原則としています。

自己申告によらざるを得ない場合は、適正に申告するよう本人と管理者へ十分に説明したうえで、申告内容が実態と合っているかを必要に応じて調査し、補正することが求められます。

入退場の記録と申告時間に大きな差があるときは、実態調査が必要です。

※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

安全衛生管理とハラスメント防止

現場の安全衛生管理は派遣先が担います。労働安全衛生法のうち、作業環境の管理や危険有害業務の就業制限、作業内容に応じた安全衛生教育など、設備や業務内容と切り離せない項目については、派遣先が事業者として責任を負います。

ハラスメントの防止措置は、派遣元だけでなく派遣先にも義務づけられています

労働者派遣法は、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、労働施策総合推進法の規定について、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなして適用すると定めており、条文の「雇用管理上」という文言を「雇用管理上及び指揮命令上」と読み替えます。

そのため、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントの相談に応じる体制は、派遣先にも必要です。派遣スタッフから苦情の申出を受けた派遣先は、自主的な解決を図るよう努めることとされています。

※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

派遣先管理台帳への記録と派遣元への通知

派遣先は、原則として派遣労働者ごとに派遣先管理台帳を作成し、派遣就業をした日、日ごとの始業・終業時刻と休憩時間、従事した業務の種類、苦情の処理に関する事項などを記載する義務があります。

※派遣先の事業所等で働く派遣労働者と、派遣先が雇用する労働者の合計が5人以下の場合は、派遣先管理台帳の作成・記載は不要です。

派遣先管理台帳の記載事項のうち、法令で定められた事項は、1か月ごとに1回以上、一定の期日を定めて、書面の交付等により派遣元へ通知しなければなりません。

通知の期日を決めないまま、その都度都合のよいタイミングで送る運用では、この要件を満たせません。派遣契約を結ぶ段階で通知の期日と方法を決め、台帳への記載を日々の業務に組み込んでおきましょう。

※出典:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則

派遣社員の勤怠管理の実務フロー4ステップ

月次の勤怠は、打刻から承認、通知、給与計算と請求への反映という4つのステップで確定します。情報が誰から誰へ渡るのかという流れと、期日の考え方に絞って見ていきます。

STEP1:派遣スタッフが出退勤を打刻する

最初に、派遣スタッフ本人が日々の出退勤時刻と休憩時間を記録します。打刻の方法は就業先の環境によって異なり、次のような手段が使われます。

  • 派遣先が用意したタイムカードや入退館システム
  • 派遣元が指定した紙のタイムシート
  • スマートフォンやパソコンからのクラウド打刻

複数の派遣先に同時にスタッフを出している場合、記録の方法が就業先ごとにばらつくと、後工程の集計が煩雑になります。契約を結ぶ段階で、どの方法で記録するかを派遣先と決めておきます。

STEP2:派遣先の指揮命令者が勤務実績を確認して承認する

締め日になると、派遣先の指揮命令者が記録された勤務実績を確認します。遅刻や早退の有無、指示したとおりに残業が行われているかを点検し、内容に問題がなければサインや押印、システム上の決裁によって承認します。

承認は、派遣先が把握した労働時間を正式な実績として確定させる工程です。ここで滞ると、後続の工程がそのまま後ろ倒しになります。

指揮命令者が不在になりやすい職場では、代理の承認者をあらかじめ決めておくと滞留を防げます。

STEP3:派遣先が期日を定めて派遣元へ就業実績を通知する

承認された実績は、派遣先から派遣元へ通知されます。通知するのは派遣先管理台帳に記載した就業実績の項目で、期日を定めて行うことが派遣先に義務づけられています。

期日は法律で指定されていないため、派遣元の給与計算のスケジュールから逆算して決めます。締め日の翌営業日までとするのか、翌3営業日までとするのかで、後工程に使える日数が変わります。

派遣先ごとに期日がばらばらだと、督促の手間が増えます。派遣契約の様式に期日の欄を設け、標準の期日を決めておくと運用が安定します。

STEP4:派遣元が給与計算と派遣料金の請求に反映する

通知された実績をもとに、派遣元が給与計算と派遣料金の請求書発行を進めます。

派遣では、同じ勤怠データが派遣スタッフへの給与と派遣先への請求という2つの計算根拠になります。給与計算だけで完結しないため、実績の誤りは支払いと売上の両方に影響します。

回収が遅れると、給与の振込と請求処理が同時に遅れます。給与の支払日は動かせないため、遅れた分は確認作業の時間を削って吸収することになります。

締め日から支払日までの日数を数え、どの工程に何日使えるのかを先に配分しておきましょう。次の表は、締め日を月末、給与の支払日を翌月15日とした場合の組み立て例です。

タイミング

実施すること

担当

締め日(月末)

打刻とタイムシートの記入を締める

派遣スタッフ

締め日の翌営業日

勤務実績を確認して承認する

派遣先の指揮命令者

締め日から3営業日以内

就業実績を派遣元へ通知する

派遣先

締め日から4営業日以内

未着分を督促し、実績を確定する

派遣元

締め日から6営業日以内

給与計算と割増賃金の計算を行う

派遣元

締め日から8営業日以内

請求書を発行して派遣先へ送付する

派遣元

支払日(翌月15日)

給与を支払う

派遣元

なお、この日程は運用例であり、法律で定められた期日ではありません。実際の期日は、給与の支払日や派遣先との契約内容に合わせて決めます。

派遣の勤怠管理でよくある課題

派遣の勤怠管理でよくある課題として、二重管理の発生、紙やExcelでの管理、リアルタイムでの把握の難しさを示した図

派遣の勤怠管理では、紙やExcelを前提とした運用を続けているほど、確認の手間と法令上のリスクが増えていきます。ここでは、派遣元の実務でよく見られる課題を4つ取り上げます。

派遣元と派遣先の二重管理で確認や承認に手間がかかる

派遣スタッフが、派遣先の入退館用タイムカードと、派遣元へ提出する紙のタイムシートの両方に記入を求められることがあります。

この場合、派遣先の担当者も自社の勤怠システムと派遣元の用紙の両方を確認し、それぞれに承認を行うことになります。

同じ労働時間を2か所に記録する運用は、現場の事務負担を増やすだけでなく、2つの記録が食い違ったときにどちらが正しいのかを判断する作業も生みます

派遣先にとって派遣スタッフの勤怠承認は本来の業務ではないため、手順が増えるほど優先度は下がり、承認も後回しになりがちです。

タイムシートの回収遅れや転記ミスが起こりやすい

紙やExcelでの管理では、締め日を過ぎてからの回収作業に時間がかかります。FAXや郵送、PDFのメール添付で届く実績を集め、未提出のスタッフや承認待ちの派遣先へ督促する必要があります。

回収したデータを給与計算システムへ手作業で転記する工程が残っていると、入力の誤りが混ざりやすくなります

就業人数が数十名を超えたあたりから、担当者の負荷が大きくなるケースも少なくありません。

タイムシートの書き方や訂正のルールは、次の記事で詳しく解説しています。

残業や有給の取得状況をリアルタイムで把握しにくい

月末にタイムシートを回収するまで、誰が何時間残業しているのかを派遣元が把握できない運用は珍しくありません。

把握が遅れると、36協定の上限に近づいていることに気づけないまま月が終わり、事後の対応に追われます

時間外労働の上限を超えれば労働基準法に違反し、労働基準監督署の是正指導の対象になります。派遣先から残業の情報が上がってこないまま賃金を計算すれば、未払い残業が生じるおそれもあります。

有給休暇の残日数も同じです。年5日の取得義務を満たせているかは、期の途中で確認しなければ間に合いません。派遣先が変わっても取得状況は引き継がれるため、スタッフ単位で追える状態が必要です。

勤怠記録の保管期間を満たせていない

タイムカードや出勤簿などの勤怠記録は、労働関係に関する重要な書類として保存義務の対象です。

労働基準法は保存期間を5年間と定めていますが、附則により当分の間は3年間とされています。この保存義務は、労働者派遣法の読み替えによって派遣先の使用者にも及びます。

あわせて、派遣先管理台帳と派遣元管理台帳は、それぞれ3年間の保存が必要です。

紙で保管している場合、必要な記録を取り出すまでに時間がかかり、保管場所も増え続けます。労働基準監督署の調査や未払い賃金の問い合わせでは過去の記録を求められるため、検索できる形で残しておきたいところです。

※出典:e-Gov法令検索「労働基準法」、e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

派遣社員の勤怠管理方法は3つ

派遣スタッフの勤怠を管理する主な手段は、紙のタイムシート、Excel、勤怠管理システムの3つです。

向き不向きは、就業人数と派遣先の環境によって変わります。

管理手段

向いているケース

注意点

紙のタイムシート

就業人数が少なく、パソコンを使えない現場が中心の場合

回収と手入力の負担が就業人数に比例して増える

Excel管理

自社独自の集計項目が多く、書式を細かく調整したい場合

ファイルの版が分かれやすく、計算式の破損に気づきにくい

勤怠管理システム

就業人数が多く、複数の派遣先の承認を回す必要がある場合

初期費用と月額費用が発生し、派遣先の承認フローとの調整が必要になる

勤怠管理システムの機能や、導入で解決できる範囲は次の記事にまとめています。

派遣会社が勤怠管理システムを選ぶときのポイント

派遣会社が勤怠管理システムを選ぶときの観点として、承認フローへの対応、システム連携、打刻方法の柔軟性を示した図

勤怠管理システムを選ぶときは、機能の多さではなく、派遣特有の運用に対応できるかを基準にします。派遣元・派遣先・スタッフの三者が関わる点と、勤怠データが請求にも使われる点が、一般企業の選定と異なります。

派遣先の承認フローに対応できるか確認する

最初に確認したいのは、派遣先の担当者が無理なく承認できるかどうかです。

派遣先によっては、セキュリティポリシーの関係で外部のクラウドサービスにログインできません。派遣元のシステムに派遣先がログインして承認するという前提が成り立たない場合があります。

承認の方法を1つに固定せず、派遣先の環境に合わせて選べるかどうかを確認します

たとえば、次のような手段に対応していれば、ログインを求められない派遣先でも運用できます。

  • メールに届いたリンクからの承認
  • 派遣先の勤怠システムから出力したCSVデータの取り込み

現場に合った打刻方法を選べるか確認する

派遣スタッフの就業先はオフィスに限りません。工場や倉庫、イベント会場、屋外の作業現場など、パソコンを使えない環境も多くあります。

就業先の環境が分かれるほど、打刻の方法を選べることが正確な記録につながります

確認しておきたい打刻の手段は次のとおりです。

  • スマートフォンやタブレットからのWeb打刻
  • ICカードによる打刻
  • パソコンのログイン・ログオフ記録の取得
  • GPSによる位置情報の記録

なお、労働時間の把握は客観的な記録を基礎とすることが原則のため、記録が後から検証できる形で残るかもあわせて確認しましょう。

シフトや各種申請、36協定超過のアラートに対応しているか確認する

打刻と集計だけでは、派遣の勤怠管理は完結しません。

シフト(勤務表)の作成と管理、残業申請や有給申請のワークフローを同じ画面で扱えると、派遣先とのやり取りが1か所にまとまります。

特に確認したいのは、時間外労働の上限や有給休暇の取得状況が基準に近づいたときに、通知が届く仕組みがあるかどうかです

月末に集計してから気づくのではなく、期の途中で把握できれば、派遣先との調整や代替要員の手配に間に合います。通知の条件を自社の36協定の内容に合わせて設定できるかどうかも、あわせて見ておきましょう。

給与計算や請求業務と連携しやすいか確認する

派遣では勤怠データが給与計算と請求の両方に使われるため、既存のシステムとつながるかどうかが業務量を左右します。

すでに使っている派遣管理システムや給与計算システムと、CSVやAPIでデータを受け渡せるかを確認しましょう

連携できない場合は、確定した勤怠を別のシステムへ手入力する工程が残ります。打刻と承認を電子化しても、最後の転記が手作業のままでは入力ミスの余地が残ります。

項目名や日付の書式がそのまま取り込めるか、エラーになった行をどう扱うかまで、導入前に確かめておくとよいでしょう。

契約情報や請求まで含めた管理の全体像は、次の記事で解説しています。

派遣特化型と汎用型のどちらが自社に合うか検討する

勤怠管理システムには、派遣事業向けに作られたものと、業種を問わず使える汎用型があります。

派遣特化型は、派遣元・派遣先・スタッフの三者が関わる承認や、請求への連携を前提に設計されているものが多く見られます。汎用型は導入しやすい一方で、派遣先の承認や請求連携で追加の対応が必要になる場合があります。

どちらが優れているというものではなく、就業人数や派遣先の数、既存システムとの組み合わせによって適した選択は変わります

検討の際は、勤怠だけでなくスタッフ情報や契約情報とつながるかという観点も加えてみてください。募集から就業までの情報が分断されていると、勤怠の入り口にあたるスタッフ情報の更新が追いつかなくなります。

採用管理システム「RPM」は、応募者情報や選考の進捗、応募者とのやり取りの履歴を一つの基盤で管理できるシステムです。

勤怠管理システムそのものではありませんが、大量募集を継続する派遣会社では、勤怠の前段にあたる募集と登録の管理を整えておくと、就業後の管理も回しやすくなります。

派遣の勤怠管理でよくある質問

派遣社員の残業は派遣元と派遣先どちらの36協定に従う?

派遣元が締結した36協定に従います。派遣先が自社で結んでいる協定の上限は、派遣スタッフには適用されません。

派遣先が講ずべき措置に関する指針では、派遣先は派遣元の事業場で締結された36協定の内容など労働時間の枠組みについて、派遣元に情報提供を求めるなどして連絡調整を的確に行うこととされています

残業を指示する前に、そのスタッフに適用される上限時間を確認できる状態にしておきましょう。派遣契約の締結時に共有しておくと、月の途中で判断に迷わずに済みます。

※出典:厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針

派遣先は派遣スタッフの有給休暇取得を断れる?

派遣先が一方的に断ることはできません。

年次有給休暇の付与と管理は、雇用主である派遣元の責任です。請求された時季に休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に、他の時季へ変更できる権限も派遣元が持ちます

労働基準法上、派遣先には有給休暇に関する権限がありません。

業務の都合で日程の調整が必要なときは、派遣先が本人に直接断るのではなく、派遣元へ相談します。人員が不足する場合は、代わりのスタッフの派遣を受けることも選択肢になります。

複数の派遣先で働く場合、労働時間はどう管理する?

原則として、労働時間は通算して管理します。

労働基準法は、事業場を異にする場合でも労働時間を通算すると定めており、この事業場を異にする場合には事業主を異にする場合も含まれるという行政解釈が示されています。

同じ派遣元に雇用されて複数の派遣先で働く場合は、派遣元が全体の労働時間を集計します。異なる使用者のもとで副業・兼業する場合も、原則としてそれぞれの労働時間を通算して管理します。

なお、副業・兼業については、厚生労働省が示す「管理モデル」による労働時間管理を行う方法もあります。

他社での就業は本人からの申告をもとに把握することになるため、就業を開始する時点で確認する手順を決めておきます。

※出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン

打刻漏れがあった場合はどう修正する?

派遣先の指揮命令者に事実を確認し、承認を得てから修正します。

打刻の記録がない時間帯について、実際に働いていたかどうかを判断できるのは、現場で指揮命令を行っていた派遣先です。派遣元の担当者が、スタッフの申告だけで勤怠データを書き換えることは避けてください

修正の記録は、いつ、誰が、どの理由で変更したのかをたどれる形で残します。履歴が残らない運用では、記録された労働時間の信頼性が下がります。

【まとめ】派遣の勤怠管理は役割分担の理解と運用設計が重要

派遣の勤怠管理を安定させるうえで押さえておきたい点は、次の3つです。

  • 派遣元は雇用主として賃金・年次有給休暇・36協定・災害補償を担い、派遣先は指揮命令者として日々の労働時間の把握と現場の安全衛生を担う
  • 派遣先から派遣元への通知には期日を定める義務があり、給与の支払日から逆算して月次の日程を組む必要がある
  • 客観的な記録を基礎に労働時間を把握し、保存期間を満たす形で残す

これらは担当者の経験や気配りに頼るのではなく、手順と期日として決めておく部分です。就業人数が増えるほど、属人的な運用は成り立たなくなります。

まずは通知の期日と承認の担当者を契約の中で明確にし、そのうえで記録の残し方を見直すと着手しやすいでしょう。

勤怠の精度は、その前段にあたるスタッフ情報の管理にも左右されます。採用管理システム「RPM」は、400以上の求人媒体と連携し、応募受付から面接設定までの連絡をLINE・SMS・メールで自動化できます。

登録者への初動対応を早め、就業するスタッフの情報を最新に保つ運用にご活用ください。

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髙田輝之
髙田輝之
エン株式会社(旧・エン・ジャパン)およびゼクウで営業部長を歴任。 15年以上にわたりHR業界に携わり、企業の新卒・中途採用支援を中心に、採用戦略設計・広告運用・採用管理システム(ATS)導入・歩留まり改善など、採用領域全般の課題解決に従事。現在はゼクウにて、採用管理やHRテクノロジーをはじめ、人材採用から定着・育成までをカバーするHR全体の仕組み最適化をテーマに、記事企画・監修・執筆を行っている。現場で培った知見を活かし、複雑な人事課題を構造的に整理し、読者が正しく判断できる情報発信を心がけている。

RPMの導入前に知っておきたいポイントをご紹介

目次[非表示]

  1. 派遣社員の勤怠管理は誰が行う?派遣元と派遣先で分担する
  2. 派遣元が管理する項目
    1. 賃金と割増賃金の支払い
    2. 年次有給休暇の付与と取得日数の管理
    3. 36協定の締結・届出と時間外労働の上限管理
    4. 労災保険の適用と健康診断の実施
  3. 派遣先が管理する項目
    1. 日々の労働時間・休憩・休日の把握
    2. 安全衛生管理とハラスメント防止
    3. 派遣先管理台帳への記録と派遣元への通知
  4. 派遣社員の勤怠管理の実務フロー4ステップ
    1. STEP1:派遣スタッフが出退勤を打刻する
    2. STEP2:派遣先の指揮命令者が勤務実績を確認して承認する
    3. STEP3:派遣先が期日を定めて派遣元へ就業実績を通知する
    4. STEP4:派遣元が給与計算と派遣料金の請求に反映する
  5. 派遣の勤怠管理でよくある課題
    1. 派遣元と派遣先の二重管理で確認や承認に手間がかかる
    2. タイムシートの回収遅れや転記ミスが起こりやすい
    3. 残業や有給の取得状況をリアルタイムで把握しにくい
    4. 勤怠記録の保管期間を満たせていない
  6. 派遣社員の勤怠管理方法は3つ
  7. 派遣会社が勤怠管理システムを選ぶときのポイント
    1. 派遣先の承認フローに対応できるか確認する
    2. 現場に合った打刻方法を選べるか確認する
    3. シフトや各種申請、36協定超過のアラートに対応しているか確認する
    4. 給与計算や請求業務と連携しやすいか確認する
    5. 派遣特化型と汎用型のどちらが自社に合うか検討する
  8. 派遣の勤怠管理でよくある質問
    1. 派遣社員の残業は派遣元と派遣先どちらの36協定に従う?
    2. 派遣先は派遣スタッフの有給休暇取得を断れる?
    3. 複数の派遣先で働く場合、労働時間はどう管理する?
    4. 打刻漏れがあった場合はどう修正する?
  9. 【まとめ】派遣の勤怠管理は役割分担の理解と運用設計が重要