
派遣の同一労働同一賃金とは?2つの方式の違いと判断基準をわかりやすく解説
2020年の法改正により大企業から順次適用が開始された「同一労働同一賃金」は、派遣で働く人々の待遇を大きく変える重要な制度です。
しかし、人材派遣という働き方は、雇用主である派遣会社と、実際に働く場所である派遣先企業が異なるため、正社員やパートの同一労働同一賃金とは違った独自の複雑なルールが存在します。
- 同一労働同一賃金の基本原則と、不合理な待遇差の判断基準
- 派遣特有の「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の仕組みと違い
- 派遣先企業に求められる実務対応や、よくある制度への誤解
本記事では、派遣における同一労働同一賃金の全容を構造的に解説します。
また、スタッフの契約管理や待遇設定といった実務を整理する際には、採用管理システム(ATS)や派遣管理システムなどのツールを活用する方法もあります。制度理解とあわせて、運用面の整理の参考にしてみてください。
目次[非表示]
- ・同一労働同一賃金とは?
- ・不合理な待遇差はどのように判断されるのか
- ・職務内容と責任の程度が同じかどうかが基本軸になる
- ・配置変更や転勤の範囲も判断要素に含まれる
- ・基本給や手当は「性質と目的」に照らして合理性が判断される
- ・職務内容や人材活用の違いで待遇差が認められる場合がある
- ・勤務日数や労働時間の違いは合理的な差として認められる場合がある
- ・同一労働同一賃金の対象となる待遇
- ・派遣社員の待遇はどのように決まるのか
- ・派遣先均等・均衡方式の仕組み
- ・比較対象労働者は一定の優先順位に沿って選定される
- ・基本給・賞与・手当・福利厚生などすべての待遇が比較対象となる
- ・派遣先は待遇の内容・目的・決定理由を提供する義務がある
- ・派遣先の待遇水準がそのまま反映される点に注意が必要である
- ・労使協定方式の仕組み
- ・厚生労働省の職種別・地域別賃金統計が基準となる
- ・同種業務に従事する一般労働者の平均賃金以上が求められる
- ・能力や経験の向上に応じて賃金を改善する仕組みが必要になる
- ・毎年の「局長通達」に伴う賃金水準の見直しが必要になる
- ・教育訓練や福利厚生の均衡確保は別途義務付けられている
- ・派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違い
- ・派遣先企業に求められる実務対応
- ・待遇に疑問がある場合の対応
- ・派遣社員は待遇について説明を求める権利がある
- ・納得できない場合は労働局の助言・調停制度を利用できる
- ・制度の利用を理由とした不利益取扱いは禁止されている
- ・雇用契約書や就業条件明示書で適用方式を確認できる
- ・よくある誤解と注意点
- ・派遣の同一労働同一賃金に関するよくある質問
- ・まとめ|制度の仕組みを理解し、自分の適用方式を確認することが重要
同一労働同一賃金とは?
はじめに、同一労働同一賃金という制度が持つ本来の目的と、派遣労働における特殊な立ち位置を整理します。
雇用形態ではなく「職務内容」で待遇を決めるという原則
同一労働同一賃金とは、正社員、契約社員、パートタイム、派遣社員といった雇用形態の違いを理由に、基本給や賞与などの待遇に差をつけることを禁止するルールです。
「どのような契約を結んでいるか」という名目ではなく、職務内容に着目して、公正に待遇を決定しようという考え方がベースにあります。
これまで日本企業でありがちだった「非正規だから手当を出さない」といった理不尽な慣行を打破し、働くすべての人のモチベーションを向上させる狙いがあります。
派遣では「派遣元」が待遇を決定する特殊な仕組みをとる
一般的な非正規雇用の場合、比較対象は同じ会社で直接雇用されている正社員です。
しかし、派遣社員の場合、指揮命令を受けて働く場所は派遣先企業ですが、雇用契約を結び給与を支払うのは雇用主である派遣会社です。
そのため、待遇の決定や同一労働同一賃金の確保に対する法的な責任は、あくまで雇用主である派遣会社が負うという特殊な構造になっています。
派遣先企業は、その責任を果たすための情報提供などで協力する立ち位置となります。
すべてを同一にする制度ではなく「不合理な差」を禁じる制度である
現場で非常によくある誤解ですが、この制度は「正社員と派遣社員の給料を一律で同じ金額にしなければならない」というものではありません。
職務内容や責任の重さ、経験年数などが異なれば、それに応じた待遇差を設けることは法律上も適法とされています。
法律が禁止しているのは、合理的な理由で説明ができない「不合理な待遇差」を設けることです。
不合理な待遇差はどのように判断されるのか
では、待遇の差が合理的か不合理かは、どのような基準で判断されるのでしょうか。厚生労働省のガイドラインに基づく判断軸を解説します。
職務内容と責任の程度が同じかどうかが基本軸になる
最も重視されるのが、日々の業務内容とそれに伴う責任の程度です。単に「同じ部署にいる」というだけでは同一とはみなされません。
例えば、同じように窓口で接客業務をしていても、クレーム対応や決裁権限が正社員にのみある場合、両者の責任の程度は異なるとみなされ、一定の待遇差は合理的と判断されます。
逆に、完全に同じ権限を持たせている場合は、待遇も同一に近づける必要があります。
配置変更や転勤の範囲も判断要素に含まれる
現在の業務だけでなく、将来的なキャリアパスや異動の範囲も重要な判断要素に含まれます。
現在の業務が全く同じであっても、転勤や異動の有無が異なる場合、人材活用の仕組みが異なるため、手当や基本給に差をつける正当な理由となります。
基本給や手当は「性質と目的」に照らして合理性が判断される
給与全体をざっくりとまとめて比較するのではなく、基本給、通勤手当、役職手当など、それぞれの項目が「何の目的で支給されているか」を個別に照らし合わせて判断されます。
【待遇別の合理性判断の例】
待遇・手当の種類 | 性質と支給目的 | 不合理とされやすいケース |
|---|---|---|
通勤手当・出張旅費 | 業務にかかる実費の補填 | 正社員のみに全額支給し、派遣社員には支給しない |
役職手当 | 役職に伴う責任・権限への対価 | 同じ役職・権限を与えているのに、雇用形態を理由に支給しない |
精皆勤手当 | 欠勤がないことへの奨励 | 勤務形態が同じフルタイムなどで働いているのに、派遣社員には支給しない |
このように、実費補填の交通費などについては、雇用形態を問わず同等に支給されるべきと厳しく判断されやすくなります。
職務内容や人材活用の違いで待遇差が認められる場合がある
同一労働同一賃金は、すべての労働者の待遇を完全に同一にする制度ではありません。
職務内容や責任の範囲、人材活用の仕組みなどに違いがある場合には、一定の待遇差が合理的と判断されることがあります。
例えば、転勤や配置変更を前提とした雇用形態と、勤務地や業務内容が限定されている雇用形態とでは、人材活用の仕組みが異なるため、手当や福利厚生に差が設けられるケースがあります。
重要なのは、待遇差の理由を職務内容や人材活用の仕組みに照らして合理的に説明できることです。
勤務日数や労働時間の違いは合理的な差として認められる場合がある
週5日フルタイムで働く社員と、週3日・1日5時間の時短で働く派遣社員とでは、会社に対する労働の貢献量や拘束時間が根本的に異なります。
このような労働時間や出勤日数の違いに比例して支給額を調整すること自体は、不合理な差には該当しません。働いた時間に応じた公正な計算がなされているかがポイントです。
同一労働同一賃金の対象となる待遇
不合理な差を設けてはならない「待遇」の範囲は、毎月の給与だけにとどまりません。多岐にわたる対象項目を確認します。
基本給・賞与・各種手当はすべて対象に含まれる
労働の対価として支払われる基本給をはじめ、賞与や時間外労働の手当、深夜・休日労働手当などはすべて同一労働同一賃金の対象です。
職務内容や貢献度が正社員と同じであれば、同一の算定基準で支給される必要があります。
派遣だからという理由だけで賞与を支給しない場合は、不合理な待遇差と判断される可能性があります。
交通費や退職金も不合理な差があってはならない
前述の通り、通勤にかかる交通費や出張旅費は、原則として正社員と同等の支給ルールが求められます。
また、退職金についても、不合理な待遇差が生じないように合理的な説明ができる制度設計が求められます。
現在では多くの派遣会社が、時給に退職金相当額を上乗せして支払う前払い方式などを採用して対応しています。
給食施設や休憩室などの利用機会も均等に確保される
社員食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設の利用についても、雇用形態を理由に派遣社員だけ利用を制限することは禁じられています。
同じ職場で働く以上、快適な環境で過ごす権利は均等に保障されなければなりません。これは派遣先企業が直接対応すべき重要な義務です。
業務に必要な教育訓練は同一職務なら同水準で実施される
現在の業務を遂行するために必要なスキルを身につける教育訓練や、安全衛生に関する研修は、同じ仕事に従事しているのであれば正社員と同等の内容を受講させる必要があります。
「派遣社員にはOJTを実施しない」といった区別は、指導の対象となります。
派遣社員の待遇はどのように決まるのか
派遣社員の同一労働同一賃金を実現するため、法律は派遣会社に対して2つの方式のいずれかを選択するよう定めています。
派遣元は「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」を選択する
派遣会社は、スタッフの待遇を決定するルールとして、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかを必ず採用しなければなりません。
各方式の具体的な仕組みについては後述しますが、この2つは「誰の給与水準と比較して決めるのか」という基準が根本的に異なります。
方式の選択は派遣先ではなく派遣元が行う
どちらの方式で待遇を決定するかを選ぶ権利と責任は、雇用主である派遣会社にあります。
受け入れ企業側が特定の方式を強要や指定することはできません。
実務上は、事務負担や賃金の安定性を考慮し、全国の派遣労働者の約8~9割が労使協定方式で就業していると言われています。
派遣社員には適用方式について説明を受ける権利がある
派遣会社は、スタッフを新たに雇い入れる際や、新しい派遣先へ配属される際に、どちらの方式で待遇が決定されているのかを書面等で明示する義務があります。
スタッフ側も、自分の給与がどのような基準で計算されているのか、詳細な説明を求める正当な権利を有しています。
派遣先均等・均衡方式の仕組み
1つ目の方式である「派遣先均等・均衡方式」の仕組みを解説します。これは文字通り、実際に働く派遣先企業の社員と待遇を合わせるルールです。
比較対象労働者は一定の優先順位に沿って選定される
派遣先のどの社員と比較するのかは、派遣先企業が以下の優先順位に沿って選定するルールになっています。恣意的に給与の低い社員を選ぶことはできません。
職務内容と配置の変更範囲が同じ正社員などの通常の労働者
職務内容のみが同じ通常の労働者
職務内容や変更範囲が同じ契約社員をはじめとする非正規雇用労働者
全く同じ業務の人がいない場合、業務内容が最も近い労働者
基本給・賞与・手当・福利厚生などすべての待遇が比較対象となる
選定された派遣先の労働者と、派遣社員の待遇を項目ごとに比較します。
基本給のベースだけでなく、賞与の支給月数や、住宅手当、家族手当といった派遣先企業の制度と照らし合わせて、不合理な差が出ないように派遣会社が給与を再設計します。
派遣先は待遇の内容・目的・決定理由を提供する義務がある
この方式を成立させるため、派遣先企業は自社社員の待遇水準や評価制度など、比較対象となる労働者に関する情報を事前に派遣会社へ提供する義務があります。
これらの情報が提供されなければ、派遣会社は派遣社員の待遇を適切に設計することができません。そのため実務上は、必要な情報提供がない場合、派遣先均等・均衡方式に基づいた適正な派遣契約を締結することが難しくなります。
また情報提供義務に違反した場合、派遣先企業は労働局からの指導や勧告の対象となる可能性があります。
派遣先の待遇水準がそのまま反映される点に注意が必要である
派遣先が給与水準の高い大企業であれば、派遣社員の給与も上がりやすくなります。
しかし逆に、給与水準の低い中小企業へ派遣された場合は、仕事内容が変わっていなくても、比較対象が下がるため時給が下がるリスクがあります。
派遣先が変わるたびに給与が大きく変動しやすいのがこの方式の最大の特徴です。
労使協定方式の仕組み
2つ目の方式である「労使協定方式」について解説します。現在、多くの派遣会社がこの方式を採用して事業を安定的に運営しています。
厚生労働省の職種別・地域別賃金統計が基準となる
この方式では、派遣先の社員の給与ではなく、毎年公表される「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」を比較の絶対基準とします。
事務、製造、ITなどの職種と、都道府県などの働くエリアによって、基準となる最低限の時給額が国から細かく定められます。
同種業務に従事する一般労働者の平均賃金以上が求められる
派遣会社は、労働組合または労働者の過半数代表者と労使協定を結び、一般労働者の平均的な賃金額と『同等以上の給与』を支払うことを約束します。
これにより、派遣先企業の給与水準が低かったとしてもそれに引きずられることなく、世間一般の相場に見合った適正な待遇が底支えされます。
能力や経験の向上に応じて賃金を改善する仕組みが必要になる
単に国の最低基準を満たせば終わりではありません。
派遣スタッフのスキルアップ、勤続年数、人事評価の向上に応じて、能力や経験に応じて賃金を改善する仕組みを労使協定に定める必要があります。
毎年の「局長通達」に伴う賃金水準の見直しが必要になる
労使協定方式は一度決めたら終わりではありません。
毎年、局長通達により一般労働者の賃金水準(最低基準)が改定・引き上げられる傾向にあります。
そのため派遣会社は、毎年自社の賃金テーブルが最低基準を下回っていないかを確認し、必要に応じてベースアップなどの労使協定の結び直しを行うという重い実務負担が発生します。
教育訓練や福利厚生の均衡確保は別途義務付けられている
労使協定方式で独自に決めてよいのは賃金に関する部分のみです。
社員食堂の利用や現場での教育訓練については、派遣先企業の社員と同等の扱いを受けられるよう配慮する義務が派遣先企業に課せられています。
派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違い
2つの方式の違いを、より明確に比較できるように整理します。
【同一労働同一賃金 2つの方式の比較表】
項目 | 派遣先均等・均衡方式 | 労使協定方式 |
|---|---|---|
比較する対象 | 同種の業務を行う派遣先の社員 | 厚生労働省の基準となる一般労働者の統計データ |
賃金の変動 | 派遣先が変わるたびに水準に合わせて変動する | 派遣先が変わっても職種が同じなら変動しにくい |
賃金のベース | 派遣先が定めた給与規定や制度 | 派遣会社が定めた賃金規程・評価制度 |
派遣先の負担 | 自社の詳細な給与や手当情報の提供が必要なため負担大 | 教育訓練や福利厚生に関する情報提供のみのため負担小 |
基準とする対象が「派遣先労働者」か「一般労働者統計」かで異なる
最大の違いは、給与を決める際の「ものさし」をどこに置くかです。
派遣先企業の個別事情に合わせるか、国が示す世間一般の相場に合わせるかという根本的な違いがあります。
これにより、スタッフのキャリア形成の方向性も変わってきます。
賃金の安定性と派遣先水準との連動性に違いがある
労使協定方式は、派遣会社が定める評価制度に基づいて給与が決まるため、派遣先が変わっても時給が下がりにくく、派遣先の給与水準の影響を受けにくい傾向があります。
一方の派遣先均等・均衡方式は、派遣先企業の業績や独自の給与テーブルにダイレクトに連動するため、派遣先の給与水準の影響を受けやすい特徴があります。
派遣先企業の実務負担の大きさにも差がある
派遣先企業にとって、自社の生々しい給与データや評価基準を外部の派遣会社へ開示することは、情報管理の観点から非常に高いハードルとなります。
そのため、実務上の負担が圧倒的に少ない「労使協定方式」を採用している派遣会社を選ぶ傾向が強くなっています。
派遣先企業に求められる実務対応
同一労働同一賃金の実現において、労働者を受け入れる派遣先企業が果たすべき法的な責任と実務フローを確認します。
比較対象労働者の待遇情報を事前に提供する義務がある
方式に関わらず、派遣契約を締結する前に、派遣会社へ必要な情報を提供しなければなりません。
【派遣先が提供すべき主な情報一覧】
比較対象となる社員の職務内容と責任の程度
業務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の有無
食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用機会
この情報提供を怠ったまま派遣を受け入れると、労働局から勧告を受け、悪質な場合は企業名公表の対象となる可能性があります。
教育訓練や福利厚生施設の利用機会を確保する必要がある
派遣社員が業務を円滑に進めるための導入研修を実施したり、社員食堂や更衣室を正社員と同じように利用できるようにしたりする環境整備は、派遣先企業が現場で直接責任を持って対応すべき事項です。
施設のキャパシティ不足など正当な理由がない限り、利用を拒むことはできません。
派遣料金についても待遇確保に配慮が求められる
派遣会社がスタッフへ適正な賃金を支払い、計画的な教育訓練を実施するためには、その原資となる派遣料金が適正な水準であることが不可欠です。
特に労使協定方式の場合、前述した毎年の国の基準額引き上げに伴い、派遣会社から時給を上げるための単価アップを打診されるケースが急増しています。
派遣先企業はこれを単なるコスト増と突っぱねるのではなく、法令遵守の観点から誠実に協議に応じる配慮が求められます。
スタッフの賃金と、派遣先企業が支払う派遣料金の差額である「マージン(手数料)」の構造や平均相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】派遣会社のマージン率とは?平均相場・計算方法・内訳をわかりやすく解説
待遇に疑問がある場合の対応
もし、自分が受けている待遇に納得がいかない場合、派遣スタッフはどのような行動をとるべきか解説します。
派遣社員は待遇について説明を求める権利がある
派遣社員は、自分の時給がどのように決定されたのか、正社員との間に待遇差があるならその理由は何かについて、派遣会社に対して詳細な説明を求めることができます。
派遣会社は、合理的な理由を説明する法的な義務を負っています。
納得できない場合は労働局の助言・調停制度を利用できる
派遣会社からの説明に納得できない場合や、話し合いが平行線になった場合は、各都道府県の労働局に設置されている総合労働相談コーナーを利用できます。
専門の相談員が間に入り、無料で非公開の調停をはじめとする紛争解決援助を行ってくれるため、泣き寝入りする必要はありません。
制度の利用を理由とした不利益取扱いは禁止されている
待遇の説明を求めたり、労働局に相談して調停を利用したりといった正当な権利行使を理由として、解雇や雇止めなどの不利益な取り扱いは、法律で固く禁じられています。
雇用契約書や就業条件明示書で適用方式を確認できる
自分がどちらの方式で働いていて、どんな基準で評価されているかを知りたい場合は、入社時や契約更新時に交付される就業条件明示書や雇用契約書を確認してください。
必ずどちらの方式が適用されているかが明記されています。
派遣スタッフの入社時や更新時に必ず交付される「労働条件明示書」の正しい見方や、2024年の法改正で追加された必須項目については、以下の記事で解説しています。
【関連記事】労働条件明示書とは?2024年改正後の記載事項と変更の範囲の実務ポイント
よくある誤解と注意点
同一労働同一賃金という言葉の響きから生じやすい、現場での典型的な誤解を解消しておきましょう。
同一労働同一賃金は必ず同額になる制度ではない
前述の通り、雇用形態の枠を超えて完全に同じ給料にする制度ではありません。
業務の範囲やトラブル対応の有無、責任の重さ、経験年数などに明確な違いがあれば、それに応じた「合理的な差」をつけることは当然に認められています。
労使協定方式だから必ず賃金が低くなるわけではない
派遣先の高い給与水準に直接合わせない労使協定方式は、スタッフにとって不利だと考えられることもあります。しかし実際には、必ずしもそうとは限りません。
実務上は、多くの派遣会社が労使協定方式を採用しています。
労使協定方式では、厚生労働省が公表する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」以上の賃金を確保することが求められています。また、能力や経験に応じて賃金を改善する仕組みを設けることも必要とされています。
そのため、派遣先企業ごとの給与水準に大きく左右されにくく、派遣会社の賃金テーブルや評価制度に基づいて、比較的安定した賃金体系が運用されるケースが多いという特徴があります。
合理的な理由があれば待遇差は認められる
例えば、正社員には全国転勤の義務があり、派遣社員には転勤がない場合、住宅手当や赴任手当に差をつけることは合理的と判断されます。
待遇や手当の「性質と支給目的」に沿って、客観的で論理的な説明がつくかどうかが基準となります。
派遣の同一労働同一賃金に関するよくある質問
制度に関して、現場のスタッフや企業の担当者からよく寄せられる疑問にお答えします。
派遣社員の時給は必ず上がりますか?
必ず上がるとは限りません。
すでに現在の時給が、国が定める一般労働者の平均水準や、派遣先の社員の待遇と同等以上である場合は、時給が据え置きになるケースもあります。
ただし、相場よりも不当に低い水準で働かされていた場合は、制度の適用と是正による時給アップが見込めます。
労使協定方式のほうが有利ですか?
一長一短があり、どちらが有利かは働く状況によって異なります。
労使協定方式では、厚生労働省が公表する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」以上の賃金を確保することが求められています。また、能力や経験に応じて賃金を改善する仕組みを設ける必要があります。
そのため、派遣先企業の給与水準に大きく左右されにくく、派遣会社の賃金テーブルに基づいて比較的安定した賃金体系で働けるケースが多いという特徴があります。
一方で、給与水準が非常に高い企業で長期間働くことが決まっている場合には、派遣先の社員待遇を基準にする派遣先均等・均衡方式の方が、結果として収入が高くなる可能性もあります。
派遣でも退職金は支払われますか?
法律上、すべての派遣社員に退職金制度が必ず設けられているわけではありません。
ただし同一労働同一賃金の制度により、退職金を含む待遇について不合理な差が生じないようにすることが義務付けられています。
そのため実務では、退職金相当額を確保するために、毎月の時給に一定割合を上乗せする「前払い方式」や、一定の勤続年数を満たした場合に退職時に支払う方式などが採用されています。
厚生労働省の指針では、前払い方式の場合は賃金の6%以上を退職金相当として扱う方法が例として示されています。
交通費は必ず支給されますか?
法律上、交通費の支給自体が絶対義務とされているわけではありません。
ただし通勤手当は「通勤にかかる実費の補填」という性質を持つ待遇であるため、同一労働同一賃金の考え方では、正社員と派遣社員の間で不合理な差を設けることは認められにくいとされています。
そのため実務上は、実費支給、または時給に交通費相当額を含めて支給するなどの方法で交通費相当分を確保する企業が一般的です。
現在では「交通費なし」の求人は、同一労働同一賃金の観点から適切とはみなされにくい傾向があります。
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」でも、通勤手当は原則として同様に支給すべき待遇の例として挙げられています。
派遣先が違法な対応をした場合はどうなりますか?
行政指導や企業名公表の対象となります。
派遣先企業が、必要な待遇情報を提供しなかったり、食堂の利用を不当に制限したりした場合、労働局からの行政指導や改善命令の対象となります。
これに従わない悪質なケースでは、企業名が公表されるなど、社会的信用を大きく損なうことになります。
まとめ|制度の仕組みを理解し、自分の適用方式を確認することが重要
派遣の同一労働同一賃金は、雇用形態による不合理な格差をなくし、納得して働ける環境を作るための強力なルールです。
比較基準の違い: 派遣先の社員と合わせるか、世間一般の相場と合わせるかの2つの方式がある
責任の所在: 待遇を決定し、制度を適正に運用する法的な責任は雇用主である派遣会社にある
情報開示: 派遣先企業からの情報提供がなければ、適正な待遇決定は実現しない
企業側は自社の待遇設計が法律の要件を満たしているかを定期的に見直し、スタッフ側は自分の雇用契約書を確認し、適正な評価と待遇を受けているかを知ることが第一歩となります。
派遣会社にとって、同一労働同一賃金への対応は、スタッフ一人ひとりの経験や評価に応じた緻密な賃金テーブルの管理や、局長通達に伴う毎年の時給改定作業、派遣先企業との情報連携など、事務作業の複雑化を招きます。
法改正への対応では、スタッフごとの契約内容や待遇の履歴管理、賃金テーブルの見直しなど、派遣会社の管理業務が複雑になりやすい傾向があります。
こうした業務を効率化する方法として、採用管理システム(ATS)や派遣管理システムなどのツールを活用する企業も増えています。
たとえば、採用管理システム(ATS)「RPM」では、スタッフのスキル情報や雇用契約の内容をシステム上で一元管理することができ、労使協定方式に基づく評価や時給設定の管理をサポートします。
契約管理や待遇管理の負担を軽減し、法令に対応した運用を行うための選択肢の一つとして、こうしたシステムの活用を検討してみるのもよいでしょう。






