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派遣元管理台帳とは?記載事項・保存期間と実務対応を解説

派遣元管理台帳とは、派遣会社(派遣元)が派遣労働者ごとに作成し、派遣終了日から3年間保存することが労働者派遣法第37条で義務付けられている法定帳票です。

未作成や更新漏れがあると、労働局の是正指導や罰則の対象となる可能性があります。

「契約時の情報は書いているが、その後の教育訓練や苦情対応の履歴が更新されていない」
「労働局の定期監督が入るたびに、過去の記録を慌てて探し出している」

人材派遣会社(派遣元)のコンプライアンス管理において、実務上の負担となりやすく、かつ運用上の不備が起きやすいのが「派遣元管理台帳」です。

派遣元管理台帳は、派遣開始時に一度作成して終わりではありません。派遣スタッフの雇用主として、適正な労務管理やキャリア支援を継続的に行っていることを客観的に証明するための重要な法定帳票です。

この記事を読むとわかること
  • 派遣元管理台帳に記載すべき法定項目と、法改正で追加された「3つの重要項目」

  • 派遣先管理台帳との違いと、監査で指摘されやすい「変動情報」の更新ルール

  • 「5名以下の事業所でも必要か?」といった実務の疑問への回答

派遣元管理台帳に記載すべき法定項目から、法改正による注意点、そして「現場で更新漏れを防ぐための運用設計」までを構造的に解説します。

煩雑な契約情報の管理やスタッフごとの対応履歴を一元化し、コンプライアンス遵守と業務効率化を両立する採用管理システム(ATS)「RPM」についてもご紹介します。

適正な派遣事業運営のための実務マニュアルとしてお役立てください。

目次[非表示]

  1. 1.派遣元管理台帳とは何か
    1. 1.1.単なる名簿ではなく「就業実態と保護措置の証跡」である
  2. 2.派遣元管理台帳に何を書けばよいか
    1. 2.1.契約書から転記する事項
    2. 2.2.就業中に更新する事項
  3. 3.法改正で追加された3つの重要項目
    1. 3.1.協定対象派遣労働者か否か
    2. 3.2.業務に伴う責任の程度
    3. 3.3.雇用安定措置の希望聴取内容
  4. 4.派遣先管理台帳との違い
    1. 4.1.記録主体と目的が異なる
    2. 4.2.派遣先台帳の内容は派遣元台帳に反映させる必要がある
  5. 5.保存期間と保管方法
    1. 5.1.起算日は「作成日」ではなく「終了日」
    2. 5.2.電子保存も可能だが改ざん防止とバックアップが前提
  6. 6.未作成・不備のリスク
  7. 7.派遣元管理台帳に関するよくある質問
    1. 7.1.5名以下の事業所でも必要か
    2. 7.2.紹介予定派遣の場合は何を追加するか
    3. 7.3.電子データのみで保存して問題ないか
  8. 8.まとめ|派遣元管理台帳は「作成」よりも「運用設計」が重要

派遣元管理台帳とは何か

派遣元管理台帳の法的位置づけと本質的目的を示した構造図はじめに、派遣元管理台帳の法的な位置づけと、作成する本質的な目的を整理します。

派遣元管理台帳は、派遣会社(派遣元)が派遣労働者ごとに作成し、派遣終了日から3年間保存することが義務付けられている法定帳票です。労働者派遣法第37条に基づき、事業所ごとに備え付ける必要があります。

単なる名簿ではなく「就業実態と保護措置の証跡」である

この台帳は、単にスタッフの名前や契約期間を管理するための名簿ではありません。

派遣スタッフの雇用主として、「苦情処理」「教育訓練の実施」「キャリアコンサルティング」「雇用安定措置」といった、法令で定められた保護措置を適切に行っているかを証明する証跡としての役割を持ちます。

労働局の監査(定期監督)では、これらの履歴が正しく記録され、実態を伴っているかが厳しくチェックされます。

【関連記事】派遣先管理台帳とは?作成義務・記載項目・通知方法をわかりやすく解説

派遣元管理台帳に何を書けばよいか

労働者派遣法施行規則で定められた記載事項は多岐にわたりますが、実務上は「契約開始時に転記する情報」と「就業中に随時更新する情報」の2つに分けて管理すると、運用の見通しが良くなります。

派遣元管理台帳の記載事項(契約時の固定情報と就業中の変動情報)の整理図

契約書から転記する事項

主に派遣就業が開始するタイミングで、基本契約書や個別契約書、就業条件明示書などから転記する固定情報です。

  • 派遣労働者の氏名
  • 派遣先事業所の名称・所在地・就業場所
  • 派遣期間、就業日、就業時間
  • 従事する業務の種類
  • 派遣元および派遣先の責任者、苦情の申出先
  • 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の資格取得要件の有無

これらの項目は、契約更新のタイミングで派遣期間や条件に変更があった場合、必ず台帳もセットでアップデートする運用ルールにしておくことが基本となります。

就業中に更新する事項

現場の運用において最も漏れが発生しやすいのが、就業開始後に随時発生する変動情報(運用記録)です。

  • 苦情処理の記録: 申し出を受けた年月日、内容、および処理の顛末
  • 教育訓練の記録: 実施した日時、内容(段階的かつ体系的な教育訓練であること)
  • キャリアコンサルティングの記録: 実施日、内容(キャリアパスに関する相談内容など)
  • 雇用安定措置の記録: 実施内容(派遣先への直接雇用依頼、新たな派遣先の提供など)

これらは「いつ、誰が、どのように対応したか」を具体的に記録する必要があります。

営業担当やコーディネーターの記憶や個人のメモ帳に留まっている状態では、監査の際に義務を果たした証明ができません。

法改正で追加された3つの重要項目

2020年および2021年の労働者派遣法改正により、「同一労働同一賃金」への対応や雇用安定措置の強化を目的として、記載義務が追加・強化された項目があります。

古いフォーマットを使い続けている場合は直ちに見直しが必要です。

2020・2021年改正で追加された3項目(協定対象・責任の程度・雇用安定措置)の図

協定対象派遣労働者か否か

その派遣スタッフの待遇決定方式が、「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」のどちらであるかを明記する必要があります。

実務上は多くの派遣会社が労使協定方式を採用しているため、その場合は「協定対象派遣労働者である」旨を明確に記載し、協定の有効期間なども併記しておくのが安全です。

業務に伴う責任の程度

単に「〇〇の業務」と書くだけでなく、その業務における責任の程度を具体化する必要があります。

これは正社員との待遇差を説明するための重要な根拠となります。

そのため、役職の有無だけでなく、「マニュアルに基づく定型業務のみか」「独自の判断や決裁権限を伴うか」「部下の指導やトラブル対応を含むか」といった権限や役割の範囲まで明確に記載する必要があります。

雇用安定措置の希望聴取内容

派遣期間の制限を迎えるスタッフに対する雇用安定措置について、これまでは実施内容の記載のみでしたが、「スタッフ本人がどの措置を希望したか」を事前に聴取し、その結果を記録することが義務化されました。

単に聞いたという事実だけでなく、希望の優先順位や、最終的な実施結果との整合性まで詳細に記録に残す必要があります。

派遣期間の制限(3年ルール)の原則と例外、抵触日の管理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】派遣の抵触日とは?3年ルールの計算・通知義務・延長手続きを完全解説

派遣先管理台帳との違い

派遣元管理台帳と派遣先管理台帳の違いを比較した対比図労働者派遣という仕組みにおいて、派遣元と派遣先はそれぞれ異なる責任を負っています。派遣元は「雇用管理」、派遣先は「就業実態管理」を担うという構造的な違いを理解しておくことが重要です。

比較項目

派遣元管理台帳(派遣会社)

派遣先管理台帳(受け入れ企業)

主な目的

雇用主としての労務管理の記録
(例:教育・苦情対応・保険)

現場の就業実態の記録
(例:労働時間・業務内容)

通知義務

なし
※派遣労働者への就業条件明示義務は別途あり

あり
※派遣元への通知義務あり(法第42条)

保管義務

派遣終了日から3年

派遣終了日から3年

記録主体と目的が異なる

派遣元管理台帳は「雇用主として、スタッフのキャリア形成や不満解消(苦情処理)にどう取り組んだか」という保護措置の記録が中心となります。

一方、派遣先管理台帳は「現場で実際に何時間働き、どんな業務を指揮命令したか」という日々の就業実態の記録が中心です。

派遣先台帳の内容は派遣元台帳に反映させる必要がある

派遣元(派遣会社)は現場に常駐しているわけではないため、日々の労働時間や、現場でスタッフから出た苦情の全容を直接把握することはできません。

そのため、派遣先から遅滞なく通知される「派遣先管理台帳の内容」を受け取り、その内容を自社の「派遣元管理台帳」や給与計算システムに速やかに反映させるという情報連携のフローを構築する必要があります。

保存期間と保管方法

作成した台帳は、法令で定められた期間、適切に保存していつでも確認できる状態にしておく義務があります。

保存期間の起算日と電子保存要件を示したタイムライン図

起算日は「作成日」ではなく「終了日」

派遣元管理台帳の保存期間は、「その派遣労働者の派遣就業が終了した日から3年間」です。事業所単位で保管します。

契約を何度も更新している場合は、「すべての更新が終わり、最終的に派遣契約が終了した日」が起算点となります。作成した日から3年経過したからといって、就業中のスタッフの台帳を破棄してしまうと法令違反になります。

電子保存も可能だが改ざん防止とバックアップが前提

紙のバインダーで保管する必要はなく、システムやクラウドストレージを利用した電子データ(PDFやCSVなど)での保存も認められています。

ただし、「求めに応じてパソコンの画面に速やかに表示でき、直ちに印刷できること」に加え、「内容の改ざんができない措置(アクセス権限の管理やログの保存)」と「データのバックアップ」が行われていることが前提となります。

未作成・不備のリスク

派遣元管理台帳の作成・保存は、労働者派遣法に基づく厳格な義務です。

これらを怠った場合、または虚偽の記載をした場合は、30万円以下の罰金の対象となります(派遣法第61条)。

また、労働局の監査で不備が多数見つかった場合は行政指導(是正勧告)を受けます。

これを放置したり、意図的な改ざんが発覚したりした場合は、事業改善命令や労働者派遣事業の許可取り消しといった重い処分につながるコンプライアンス上の重大なリスクを含んでいます。

派遣元管理台帳に関するよくある質問

現場の実務担当者からよく寄せられる疑問について回答します。

5名以下の事業所でも必要か

必要です。派遣先管理台帳には「合計5名以下の事業所は免除」という例外規定がありますが、派遣元管理台帳には人数の例外規定はありません。

派遣労働者を1名でも雇用して派遣している以上、派遣会社は必ず作成・保管の義務を負います。

紹介予定派遣の場合は何を追加するか

紹介予定派遣としてスタッフを派遣する場合は、通常の記載事項に加えて「紹介予定派遣である旨」を記載します。

さらに、派遣就業終了後に職業紹介を行い、結果的に派遣先がそのスタッフを雇用しなかった(採用見送りとなった)場合は、「派遣先が雇用しなかった理由」を派遣先から聴取し、台帳に記録する必要があります。

紹介予定派遣の基礎知識や、人材派遣・人材紹介それぞれの契約形態・費用の違いについては、以下の記事でわかりやすく解説しています。

【関連記事】人材派遣と人材紹介の違いとは?契約・費用・使い分けを解説

電子データのみで保存して問題ないか

問題ありません。前述の通り、即時出力(印刷)が可能な状態であり、改ざん防止措置や適切なバックアップが行われていれば、紙への出力・ファイリングをせず、クラウドシステムなどの電子データのみで保存・運用することが可能です。

むしろ検索性や更新のしやすさを考慮すると、電子化が実務上のスタンダードとなっています。

まとめ|派遣元管理台帳は「作成」よりも「運用設計」が重要

派遣元管理台帳は、作成すること自体がゴールではありません。派遣スタッフの雇用とキャリアを守るための、継続的なプロセスの証明書です。

契約締結時の固定情報を転記するだけであれば簡単ですが、実務において監査リスクとなるのは「就業期間中に発生する、教育訓練や苦情対応、雇用安定措置といった変動情報の更新漏れ」です。

営業担当、コーディネーター、労務担当者の間で「誰が、いつ、どのタイミングで台帳に記録を残すのか」という業務フロー(運用設計)を構造化し、属人化を排除することがコンプライアンス遵守の鍵となります。

事業規模が拡大し、扱う案件やスタッフ数が増えるにつれて、教育訓練の実施記録や日々の苦情対応履歴を、Excelや紙の台帳に手作業で転記し続けることは業務負荷の面で現実的ではなくなります。

採用管理システム(ATS)『RPM』を導入すれば、スタッフの契約情報から、日々のコンタクト履歴、面談の記録までをシステム上で一元管理することが可能です。

属人的な情報管理から脱却し、監査にも耐え得る正確な「就業実態と保護措置の証跡」を自動的に蓄積していくために、ぜひRPMの活用をご検討ください。

髙田輝之
髙田輝之
エン株式会社(旧・エン・ジャパン)、ゼクウで営業部長を歴任。 15年以上にわたりHR業界に携わり、企業の新卒・中途採用支援を中心に、採用戦略設計・広告運用・採用管理システム(ATS)導入・歩留まり改善など、採用領域全般の課題解決に従事。現在はゼクウにて、採用管理やHRテクノロジーをはじめ、人材採用から定着・育成までをカバーするHR全体の仕組み最適化をテーマに、記事企画・監修・執筆を行っている。現場で培った知見を活かし、複雑な人事課題を構造的に整理し、読者が正しく判断できる情報発信を心がけている。

RPMの導入前に知っておきたいポイントをご紹介