
採用戦略とは?具体的な立て方、役立つフレームワークや採用手法を解説
採用戦略とは、「どのような人を・どの時期に・どの手法で採るか」を経営目標から逆算して設計する、人材獲得の全体計画のことです。
人材獲得競争が激しくなる昨今、これまでのような「求人を出して待つだけ」の採用活動では、なかなか応募が集まらなくなっています。
運良く採用できたとしても、「思っていたスキルと違う」「社風に合わない」といった理由で、早期離職や内定辞退といったミスマッチにつながってしまうことも少なくありません。
「良い人材が来ない」「採用コストばかりかさむ」といった悩みの多くは、実はこの「戦略の不在」が原因かもしれません。
本記事では、採用戦略の基本から、具体的な立て方、役立つフレームワーク、企業規模別の戦い方、そしてATS(採用管理システム)の活用まで、実務ですぐに使える形でわかりやすく解説します。
採用戦略を立てても、日々の応募者対応や日程調整に追われていては、肝心の「候補者とのコミュニケーション」に時間が割けません。
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目次[非表示]
- 1.採用戦略とは?
- 2.採用戦略の具体的な立て方7ステップ
- 2.1.①:経営目標から必要な人材と時期を計画する
- 2.2.②:採用ペルソナ(人物像)を設計する
- 2.3.③:自社の魅力(EVP)を言語化する
- 2.4.④:ペルソナに響く採用コンセプトを決める
- 2.5.⑤:採用手法やチャネルを選定する
- 2.6.⑥:KPIとスケジュールを策定する
- 2.7.⑦:施策の優先順位を決定する
- 3.採用戦略策定に役立つフレームワーク
- 4.採用戦略で重要な競合分析と差別化
- 4.1.採用競合を正しく捉える
- 4.2.給与以外で差別化を図る
- 5.採用戦略としての採用広報
- 6.採用戦略で活用すべき採用手法
- 7.企業規模別で考える採用戦略のポイント
- 8.採用戦略を実行し改善するポイント
- 9.採用戦略が失敗する原因と対策
- 10.採用戦略を実行する社内体制とツール
- 10.1.採用担当と現場部門の役割分担を明確化
- 10.2.採用管理システム(ATS)で情報を一元管理
- 11.採用戦略のゴールは入社後の定着
- 11.1.採用のゴールは内定ではなく入社後の活躍
- 11.2.リテンション施策で早期離職を防ぐ
- 11.3.オンボーディングで中途採用者の孤立を防ぐ
- 12.採用戦略に関するよくある質問
- 12.1.中小企業の採用戦略でコストはどれくらいかけるべきですか?
- 12.2.採用戦略として採用広報を始めてどれくらいで効果が出ますか?
- 12.3.採用戦略で選考辞退率を下げる効果的な方法はありますか?
- 12.4.採用戦略の実行に採用管理システム(ATS)は必要ですか?
- 13.【まとめ】採用戦略は経営と連動させて実行と改善を続ける
採用戦略とは?
採用戦略とは、「今年は何人採用する」という数値目標だけではありません。
経営目標を達成するために必要な人材を、「誰を・いつ・どこに・どの基準で」迎え入れるかを設計する、経営視点の重要な考え方なのです。
ここでは、なぜ今、採用戦略が必要とされているのか、その背景と本質的なメリットについて見ていきましょう。
- 経営戦略はゴールで採用戦略は手段
- 人手不足や価値観の変化が背景にある
- メリットはミスマッチ防止やコスト削減
経営戦略はゴールで採用戦略は手段
採用戦略は、経営目標を実現するための「人材の計画」です。
つまり、経営戦略が「目指すべきゴール」であり、採用戦略はそのゴールへ到達するための「手段」という関係にあります。
どのような人材が、どの部署に、いつ必要なのかを明確にするためには、事業の方向性と照らし合わせる必要があります。
たとえば、営業部が「来期20%の売上アップ」を目指す場合、「既存メンバーのスキルアップ」だけで達成できるのか、それとも「新しい人材の採用」が必要なのかを判断しなければなりません。
その際、「即戦力を2名採用して短期で成果を出すのか」、それとも「ポテンシャル層を1名採用し、長期的に育成していくのか」によって、打つべき施策は大きく変わってきます。
このように採用戦略は、「事業を前に進めるための前提条件」を整理し、採用活動を経営と同じ目線で考えるための大切なフレームワークなのです。
ここで採るべき人材像や時期が明確になるほど、後述する採用チャネルの選定や、自社の魅力づけの精度も高まっていきます。
人手不足や価値観の変化が背景にある
最近になって採用戦略が強く求められるようになった背景には、「人手不足」だけではない、構造的な変化があります。
まず、ITエンジニア、介護職、建設、営業職など、多くの職種で慢性的に候補者が不足しており、求人を出しても応募がほとんど来ない「売り手市場」が当たり前の状態になっています。
もはや、待っているだけで人が集まる時代は終わったと言えるでしょう。
さらに、働く人たちの「価値観」も大きく変化しています。
かつてのような「給与」や「会社の安定性」だけでなく、「柔軟な働き方」「成長できる環境」「心理的安全性」を重視する層が確実に増えているのです。
実際、企業文化や働き方の魅力が求人票で十分に伝わらないだけで、応募率はガクンと下がってしまうこともあります。
このような環境下では、「誰に・何を・どのように」伝えるかをしっかりと整理しなければ、自社にマッチした候補者との接点は生まれません。
このコミュニケーションを体系化し、数ある企業の中から「選ばれる理由」を作る役割を担うのが、採用戦略なのです。
メリットはミスマッチ防止やコスト削減
明確な採用戦略を持つことで、企業は無駄な選考プロセスや広告費を大幅に削減できるというメリットがあります。
たとえば、ターゲットとなる人物像(採用ペルソナ)を設計していない企業では、とにかく多くの人を集めようとして、求人媒体の数と予算だけを増やしてしまいがちです。
その結果、「求める人物像とは異なる応募」ばかりが集まり、選考対応に追われた挙句、採用に至らないという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。
一方で、戦略がある企業はターゲットが明確です。
「この層なら求人媒体よりもダイレクトスカウトが有効だ」「この職種ならエージェント紹介に予算を集中しよう」といった、効果的で再現性の高い判断が可能になります。
また、自社の魅力(訴求軸)が定まることで、候補者の入社前の期待と入社後の実態とのズレ(リアリティ・ショック)が減り、早期離職の防止にもつながります。
結果として、少ないリソースで最大の成果が出る、効率的な採用活動へと変わっていくでしょう。
採用戦略の目的は、経営目標を実現するために「誰を、どの部署に、どのタイミングで採用するか」を明確にすること。その背景には、「狙う市場を選ぶ」「選ばれる理由をつくる」「やらない施策を捨てる」という戦略的思考が必要なのです。
採用戦略の具体的な立て方7ステップ
採用戦略は、正しい手順で進めることで迷いがなくなり、成果までの最短ルートを描くことができます。
ここでは、どの企業でも再現できる「7つのステップ」に沿って、具体的な作り方を整理します。
- ①:経営目標から必要な人材と時期を計画する
- ②:採用ペルソナ(人物像)を設計する
- ③:自社の魅力(EVP)を言語化する
- ④:ペルソナに響く採用コンセプトを決める
- ⑤:採用手法やチャネルを選定する
- ⑥:KPIとスケジュールを策定する
- ⑦:施策の優先順位を決定する
①:経営目標から必要な人材と時期を計画する
採用計画の第一歩は、経営目標から逆算して「どのような人材を・どの部署に・いつまでに必要とするのか」を大まかに描くことです。
この段階では細かいスキル要件まで詰める必要はありません。
まずは「時間軸」「人物像」「採用力」という3つの視点を押さえ、現実的なラインを探っていきましょう。
【時間軸(いつ成果が必要か)】
採用活動は、「いつ成果を出してほしいか」によって求める人材が変わります。
短期決戦(即戦力必須)なのか、中長期の体制強化(ポテンシャル可)なのかを明確にします。
【人物像(レベル感)】
人物像は「経験者か未経験か」の二択ではなく、実務的には以下の4段階で整理すると、計画が立てやすくなります。
- 即戦力: 入社1〜3ヶ月で成果を出せる層
- 準・即戦力: 経験者だが、立ち上がりに3〜6ヶ月必要な層
- ポテンシャル層: 経験は浅いが、半年〜1年で戦力化できる層
- 未経験層: 完全未経験(1年以上の育成が前提)
【採用力(自社の実情)】
市場の競争率や給与相場と照らし合わせ、本当にその条件で採用可能かを見極めます。
②:採用ペルソナ(人物像)を設計する
次に、ターゲットに「刺さる採用活動」を行うための詳細なペルソナを作ります。
まずは「職種 × 経験レベル」で外枠を決め、その後に「内面(価値観)」を深掘りして、どのような訴求が響くのかを明確にしていきます。
【ターゲットの外枠(属性)】
「営業職 × 経験2〜3年」「エンジニア × ポテンシャル層」のように定義し、社内の認識を揃えます。
ここが曖昧だと、選考基準がブレてしまいます。
【内側の像(価値観・不安)】
ターゲットが何を重視し、何を懸念しているかを言語化します。
これが訴求のヒントになります。
- 重視すること: 売りやすい商材か、成果が出る仕組みはあるか、キャリアは伸びるか
- 不安に感じること: 根性論ではないか、サポート不足ではないか、評価制度は適正か
③:自社の魅力(EVP)を言語化する
EVP(Employee Value Proposition)とは、「自社で働く価値」のことです。
ここが曖昧だと、自社の魅力が候補者に伝わりません。
ターゲットが魅力に感じるポイントを、根拠となる数字や制度とセットで整理しましょう。
【EVPの本質】
魅力的なフレーズだけでなく、それを裏付ける「根拠」が必要です。
- 「未経験歓迎」なら → 根拠:未経験比率8割・専任OJTあり
- 「働きやすさ」なら → 根拠:リモート可・実働6時間勤務
- 「定着率の高さ」なら → 根拠:直近3年の定着率90%
【作り方】
「①現場のリアル」「②ターゲットの価値観」「③競合との違い」を掛け合わせ、他社では再現しにくい独自の魅力を定義します。
④:ペルソナに響く採用コンセプトを決める
EVPで整理した魅力を、ターゲットに刺さる「キャッチコピー」に変換します。
コンセプトが決まっていると、どのチャネルでも「何をどう書くか」で迷わなくなります。
【コンセプト】
「誰に・何を伝えるか」を一言でまとめます。(例:「挑戦を支えるチーム文化」「成果に集中できる環境」)
【トーン】
ターゲットに合わせて口調や雰囲気を調整します。
- 若手向け: 「専任メンターが伴走します」(親しみやすさ重視)
- ハイクラス向け: 「定着率90%・評価4.8」(実績・ロジック重視)
【一貫性】
求人票、スカウト、面接など、すべての接点で同じコンセプトとトーンを貫き、強烈な印象を残しましょう。
⑤:採用手法やチャネルを選定する
採用手法は、「どの手法ならターゲットに届くか」を基準に選びます。
求人媒体、紹介、スカウトなど、それぞれ得意な層が異なります。
【求人媒体】
「未経験層」や「大量採用」に最適です。
媒体ごとの会員属性を見て、自社のターゲットが多い媒体を選びます。
【ダイレクトリクルーティング / エージェント】
「経験者」や「即戦力」に最適です。
市場に少ない層に対し、企業側から直接アプローチしたり、プロに紹介を依頼したりします。
【リファラル採用 / 業務委託】
「カルチャーフィット」を重視するならリファラル、「高い専門性」が必要ならフリーランス活用など、正社員採用以外の手法も検討しましょう。
⑥:KPIとスケジュールを策定する
採用計画を絵に描いた餅にしないために、いつまでに何を達成するかを数値化し、進捗を見える化します。
【見るべきKPI】
多くの指標を追う必要はありません。シンプルに管理しましょう。
- 最終KPI: 採用人数、充足率
- プロセスKPI: 応募数、スカウト返信率、書類通過率、面接通過率、内定承諾率
【スケジュール】
入社希望日から逆算して策定します。
「入社日 → 内定(1〜2ヶ月前) → 面接開始 → 母集団形成」とマイルストーンを置くことで、今すぐ着手すべきアクションが明確になります。
戦略とKPIが固まったら、次は数字を見て「どこを直すか」を決めるフェーズです。求人広告を運用している場合は、ボトルネックを特定して最短で改善するために、こちらも参考になります。
▶︎ 求人広告の効果を高める方法(応募数・採用単価を改善する運用のコツ)
⑦:施策の優先順位を決定する
予算や人員といったリソースは有限です。
すべての施策を同時に行うことはできないため、「人数 × 難易度 × コスト」のバランスを見て、やるべき施策の優先順位を決めます。
【難易度で分類】
採用難易度の高い重要ポジションから優先的に、チャネルを選定します。
【予算配分】
高難易度職種に予算を寄せ、未経験職種はコストを抑えるなどメリハリをつけます。
これらが矛盾なく整合したラインが優先順位となり、明日からどの施策に着手すべきかが明確になります。
採用戦略策定に役立つフレームワーク
戦略を考える際、ゼロから頭をひねるよりも、既存のフレームワークを活用する方が効率的です。
ここでは、採用戦略づくりでよく使われる代表的な3つのフレームワークをご紹介します。
- ペルソナ分析で欲しい人材像を具体化
- 3C分析で採用環境(市場・競合・自社)を整理
- SWOT分析で自社の強みと弱みを分析
ペルソナ分析で欲しい人材像を具体化
「誰を採るのか」を明確にするための基本フレームです。
前述のステップでも触れましたが、「職種」「経験レベル」「価値観・不安」の3点を整理するだけで、採用の軸が揃います。
この軸が決まっていれば、関係者間での認識ズレを防ぐことができるでしょう。
3C分析で採用環境(市場・競合・自社)を整理
採用環境を客観的に把握するために使うのが3C分析です。
- 市場: 候補者はどれくらいいるか、採用難易度はどの程度か。
- 競合: 候補者が比較検討する他の企業はどこか。
- 自社: 自社のEVP、条件、強みは何か。
これらを整理することで、自社が勝てる「勝ち筋」が見えてきます。
SWOT分析で自社の強みと弱みを分析
自社の採用における現状を、「強み・弱み・機会・脅威」の4つに分けて整理します。
- 強み: 自社のアピールポイント。
- 弱み: 候補者に敬遠されがちな要素。
- 機会: 採用市場の追い風となるトレンド。
- 脅威: 採用の妨げとなる外部要因。
これにより、自社の「勝てるポイント」と「補うべき課題」が可視化されるため、EVPやチャネル戦略を考えるときにとても役立ちます。
採用戦略で重要な競合分析と差別化
採用活動において、競合分析は欠かせません。
なぜなら、候補者は常に複数の選択肢を比較しているからです。
「どんな強みで選ばれるか」を決めるためには、他社との違いを明確にする必要があります。
ここでは、採用戦略で重要な競合分析と差別化について、詳しく解説していきます。
- 採用競合を正しく捉える
- 給与以外で差別化を図る
採用競合を正しく捉える
採用における競合は、必ずしも同業他社だけではありません。
候補者は、「正社員として働くか、フリーランスとして独立するか」「副業で関わるか」「大手企業に行くか、ベンチャーに行くか」など、複数の選択肢を横並びで比較しています。
どの選択肢と「競っているか」を正しく捉えることで、訴求軸のズレを防ぎ、勝ち筋が明確になります。
たとえば、フリーランスを検討している層に対しては、「正社員ならではの安定と、フリーランスのような裁量の大きさ」をアピールすることが有効かもしれません。
給与以外で差別化を図る
資金力のある大企業と給与だけで勝負するのは難しい場合もあります。
ですが、候補者が重視するのは給与だけではありません。
「成長できる環境か」「安心して働けるか」「柔軟な働き方ができるか」といった、日常で感じる価値も大きな差別化要素になります。
以下のように、給与だけでなく「制度・働き方・実績」など複数の軸で自社と競合を比較してみましょう。
そうすることで、「自社が最も強く打ち出せる領域」が一目で分かるようになります。
【募集職種:カスタマーサクセスの比較例】
採用戦略としての採用広報
- オウンドメディアで「自社らしさ」を発信
- 社員インタビューで働くイメージを具体化
- 福利厚生は「実際の利用例」で訴求
オウンドメディアで「自社らしさ」を発信
採用ページやブログなどのオウンドメディアでは、理念や事業内容だけでなく、日々の働き方、組織文化、社員の価値観などを具体的に発信します。
「どのような人が働いているのか」「オフィスの雰囲気はどうか」といった情報をオープンにすることで、候補者が応募前に「ここは自分に合いそうか」を判断できるようになり、応募の質が安定します。
社員インタビューで働くイメージを具体化
現場社員の言葉は、企業側が発信するメッセージよりも信頼される傾向にあります。
職種ごとの1日の流れ、キャリアの伸び方、仕事のリアルな苦労など、候補者が本当に知りたい「等身大の情報」を伝えることで、応募動機が強くなるでしょう。
福利厚生は「実際の利用例」で訴求
福利厚生制度は、ただ制度名を羅列するよりも、「どのような人が、どのような場面で使っているか」を伝える方が響きます。
たとえば「リモート可」と書くだけでなく、「週3リモートを活用して育児と両立している社員の例」のように具体的な利用シーンを示すことで、候補者の共感が生まれます。
採用戦略で活用すべき採用手法
採用戦略では、すべての手法に手を出すのではなく、ターゲットや採用難易度に応じて使い分けることが重要です。
ここでは、特に戦略的に使い分けたい3つの手法について解説します。
- ダイレクトリクルーティングで転職潜在層へアプローチ
- リファラル採用やアルムナイ採用で定着率向上
- AI活用で選考の効率化と公平性を担保
ダイレクトリクルーティングで転職潜在層へアプローチ
企業側から候補者に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」は、待ちの姿勢だけでは出会えない層にリーチできる手法です。
特に、経験者採用や採用難易度の高い職種では、求人媒体よりも再現性が高く、まだ本格的な転職活動を始めていない候補者の「興味の芽」を早い段階で拾えることが強みです。
リファラル採用やアルムナイ採用で定着率向上
社員の知人紹介である「リファラル」や、過去の退職者との再接続である「アルムナイ」は、カルチャーフィットが高く、早期離職が起きにくい採用手法です。
企業のリアルな姿を理解した上での応募となるため、スピード感と情報の精度が高く、少人数の採用やチームの立ち上げフェーズなどで特に効果を発揮します。
AI活用で選考の効率化と公平性を担保
最近では、採用プロセスにAIを活用する動きも加速しています。
書類選考のスクリーニングや日程調整だけでなく、スカウトメールの文面作成、面接準備、選考コメントの整理といった下準備の負荷を大きく減らすことができます。
AIを活用することで、属人化しやすい工程を補完し、採用担当者が「人による判断が必要な業務」に専念できるようになるのです。
企業規模別で考える採用戦略のポイント
企業の規模によって、有効な採用戦略は異なります。
自社のフェーズに合った「最適な戦い方」を選ぶことが、採用を成功させるためには重要です。
ここでは、企業規模別で考える採用戦略のポイントについて、詳しく解説していきます。
- 大企業は仕組み化とスケールメリットを活かす
- 中小企業は独自性とチャネル絞り込みで勝負
- ベンチャーはビジョン共感とスピードを重視
大企業は仕組み化とスケールメリットを活かす
大企業は知名度やブランド力があるため、ある程度の応募数は見込めるでしょう。
そのため、採用戦略の主軸は「いかにムダなく大量採用を再現性高く回すか」にあります。
面接官による評価のバラつきをなくすために評価基準を統一したり、採用管理システム(ATS)を導入して事務作業を自動化したりと、「仕組み化」を進めることが重要です。
これにより、歩留まり(通過率)と工数を同時に改善できるでしょう。
中小企業は独自性とチャネル絞り込みで勝負
中小企業が採用で成果を出すには、大企業がやりづらい「細やかさ」に振り切ることが効果的です。
「転勤なし」「経営陣との距離が近い」といった独自の魅力を言語化し、大手にはない柔軟性をアピールします。
また、リソースが限られているため、あれこれ手を広げすぎず、「未経験なら媒体」「経験者ならダイレクト」といったように、勝てるチャネルに集中投下するのがおすすめです。
ベンチャーはビジョン共感とスピードを重視
ベンチャー企業は、ブランド力や給与条件だけで大企業と競うのは難しいかもしれません。
その分、「ビジョンへの共感」と「スピード」が採用の勝ち筋になります。
「この事業でどのような世界を作りたいか」という未来を熱く語り、トップ自らが面談に出てその場で口説くような熱量が、候補者の心を動かします。
意思決定のスピードを早めることで、他社に先んじて優秀な人材を確保できる可能性も高まるでしょう。
採用戦略を実行し改善するポイント
採用戦略は、一度作って終わりではありません。
実際に運用しながら、微調整を繰り返すことで初めて機能します。
ここでは、採用戦略を実行し改善するポイントについて、詳しく解説していきます。
- 採用コストや通過率を分析し改善
- PDCAサイクルを回し採用活動の効果を検証
採用コストや通過率を分析し改善
まずは、応募数、面接実施率、採用単価といった基本的な数字をチェックしましょう。
「応募が少ないなら、訴求内容やチャネルがずれているのかもしれない」「面接の辞退が多いなら、連絡スピードが遅いのかもしれない」といったように、数字を見ることでボトルネックが特定できます。
どこで詰まっているかが分かれば、改善策は自然と決まってくるはずです。
PDCAサイクルを回し採用活動の効果を検証
採用活動は、小さな改善でも翌週の数字が変わることがあります。
だからこそ、小さく・速く・継続的にPDCAを回すことが大切です。
スカウト文面の件名を変えてみる、求人票の写真を差し替えてみる、応募後の連絡を数時間早めてみる。こうした細かい改善の積み重ねが、最終的な採用力の差になって現れます。
採用戦略が失敗する原因と対策
採用戦略は、机上の空論になってしまうと意味がありません。
現場の運用でズレが生じないよう、よくある失敗原因と対策を知っておきましょう。
ここでは、採用戦略が失敗する原因と対策について、詳しく解説していきます。
- 面接官の主観やズレが評価のブレを生む
- 企業の課題を隠すことがミスマッチを生む
- 選考スピードの遅さが辞退の原因
- 面接フィードバックで候補者体験を向上
面接官の主観やズレが評価のブレを生む
面接官ごとに評価基準が異なると、「Aさんは合格にしたけど、Bさんは不合格にした」というように通過ラインがバラつき、採用の精度が安定しません。
組織が大きくなるほど、このリスクは高まります。
この問題を解決するには、「評価すべき項目」と「質問内容」「合格基準」を定義した評価シートの導入が有効です。
面接官トレーニングと合わせて運用することで、判断のズレが減り、求める人物像の基準が組織に定着します。
企業の課題を隠すことがミスマッチを生む
「良い人に応募してほしい」と思うあまり、自社の良い部分しか伝えないのは危険です。
入社後に「話が違う」と感じさせてしまい、早期離職につながるからです。
候補者は、期待値と実態が一致したときに安心して入社を決意します。
課題を隠すのではなく、「今はこういう課題があるけれど、これからこう解決していきたい」と未来の展望とセットで伝える方が、共感と信頼を得られるでしょう。
選考スピードの遅さが辞退の原因
応募への返信遅れ、日程調整の滞り、合否連絡の遅延は、候補者を他社に奪われる大きな要因です。
特に優秀な人材ほど、複数の企業からオファーを受けています。
採用難易度が高い職種ほど、「スピード=競争力」になると心得ておきましょう。
面接フィードバックで候補者体験を向上
合否に関わらず、面接後に短い一言でもフィードバックを伝えるだけで、候補者の満足度は大きく向上します。
「しっかりと自分を見てくれている」「丁寧に向き合ってくれる会社だ」という印象が志望度を押し上げ、辞退防止にも効果的です。
採用戦略を実行する社内体制とツール
立派な戦略があっても、それを実行する体制とツールが整っていなければ機能しません。
ここでは、採用戦略を実行する社内体制とツールについて、詳しく解説していきます。
- 採用担当と現場部門の役割分担を明確化
- 採用管理システム(ATS)で情報を一元管理
採用担当と現場部門の役割分担を明確化
採用は、人事担当者だけでは完結しません。現場の社員や経営陣の協力が必要です。
「誰が書類選考をするのか」「誰が面接をするのか」「誰が最終決定をするのか」といった役割分担を明確にしておきましょう。
ここが曖昧だと、「誰かがやるだろう」という甘えが生まれ、対応の遅れや漏れにつながってしまいます。
採用管理システム(ATS)で情報を一元管理
採用チャネルが増え、関わる社員が増えると、エクセルやスプレッドシートでの管理には限界がきます。
「情報の分散」「対応漏れ」「初動の遅れ」は、採用活動における致命傷になりかねません。
そこで活用したいのが、ATSなどの採用管理システムです。
応募者情報の一元管理、選考進捗の可視化、メール送信の自動化などが可能になり、現場の負担を大幅に減らすことができます。
たとえば、採用管理システム「RPM」であれば、これらの機能を網羅しており、煩雑な事務作業を自動化して戦略実行のための時間を生み出すことが可能です。
採用戦略のゴールは入社後の定着
採用のゴールは「内定」を出すことではありません。
入社後にその人が活躍し、長く定着してくれることが本当のゴールです。
ここでは、採用戦略のゴールについて、詳しく解説していきます。
- 採用のゴールは内定ではなく入社後の活躍
- リテンション施策で早期離職を防ぐ
- オンボーディングで中途採用者の孤立を防ぐ
採用のゴールは内定ではなく入社後の活躍
活躍できる採用とは、スキルがマッチしているだけでなく、「カルチャー」「働き方」「キャリアの方向性」まで一致している状態のことです。
これらが揃うほど、入社後の充実度が高まり、企業と本人の双方が幸せになれるはずです。
リテンション施策で早期離職を防ぐ
せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう早期離職は、コストの面でも組織の士気の面でも大きな痛手です。
定期的な1on1ミーティング、期待値のすり合わせ、キャリア相談など、社員を繋ぎ止める(リテンション)ための仕組みがあるだけで、定着率は大きく改善します。
オンボーディングで中途採用者の孤立を防ぐ
中途採用者の定着は、特に入社直後の3〜6ヶ月が勝負です。
「業務量が適切か」「入社前のイメージとギャップはないか」「相談できる相手はいるか」。これらをケアするために、初期研修やメンター制度などのオンボーディング体制を整えておくことが大切です。
孤立を防ぎ、スムーズに組織に馴染めるようサポートしましょう。
採用戦略に関するよくある質問
最後に、採用戦略を進める中で担当者が抱えるよくある質問について、Q&A形式で解説します。
- 中小企業の採用戦略でコストはどれくらいかけるべきですか?
- 採用戦略として採用広報を始めてどれくらいで効果が出ますか?
- 採用戦略で選考辞退率を下げる効果的な方法はありますか?
- 採用戦略の実行に採用管理システム(ATS)は必要ですか?
中小企業の採用戦略でコストはどれくらいかけるべきですか?
一概には言えませんが、中途採用(人材紹介利用時)の場合、一般的には年収の30〜35%程度が相場です。
中小企業の場合、あれこれとチャネルを広げすぎると費用が膨らみます。
自社と最も相性が良い1〜2つのチャネルに予算を集中させましょう。
採用戦略として採用広報を始めてどれくらいで効果が出ますか?
内定辞退の防止などには比較的早く(1〜3ヶ月)効果が出ますが、応募数を増やす目的の場合は、最低でも半年程度は見ておきましょう。
採用広報は即効性よりも、「企業の理解を深める」「期待値を整える」ことに価値がある、中長期的な施策です。
採用戦略で選考辞退率を下げる効果的な方法はありますか?
「スピード」と「魅力づけ」の改善が最も効果的です。
特に初動は重要で、応募への返信は可能な限り早く行い、面接調整もスムーズに進めます。
また、面接の中で候補者の意向に合わせて自社の魅力を伝えることも、志望度を高めるポイントです。
採用戦略の実行に採用管理システム(ATS)は必要ですか?
必須ではありませんが、月100名以上など応募数が多い企業や、選考スピードに課題がある企業には導入を強く推奨します。
手作業での管理に限界を感じているなら、ATS導入で初動の遅れや対応漏れがなくなり、採用成果が大きく向上する可能性があります。
【まとめ】採用戦略は経営と連動させて実行と改善を続ける
採用戦略は、一度作ったら終わりではありません。
経営目標、組織の課題、採用市場の変化に合わせて、実行と改善を繰り返すことで精度が高まっていきます。
採用は経営そのものです。「誰を採り、どのような組織をつくるか」は、事業の成長に直結します。
まずは求める人物像を明確にし、自社の魅力を言語化することから始めてみてください。
そして、適切なチャネルを選び、社内体制を整え、入社後の定着までを一貫して設計する。これらがつながったとき、採用活動は「経営と連動した強力な仕組み」として機能し始めるはずです。
ぜひ、この記事を参考に自社だけの採用戦略を立て、素晴らしい人材との出会いを実現させてください。
また、もし「戦略はできたけれど、日々の事務作業に追われて実行する時間がない」といったお悩みをお持ちなら、採用管理システム「RPM」の導入をぜひ検討してみてください。
応募者情報の一元管理から面接調整の自動化まで、採用業務の手間を削減することで、本来注力すべきコア業務に集中できるようになるはずです。







